第壱章 ~傭兵~

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「初めてあなたを見つけた時、こんな所にも人が来るんだって… それで、あなたは旅人で野宿をしていると聞いて、更に嬉しくなりました…」 イーチェは顔を俯けながらも、話を止めない。 「そして何故だか私はあなたを家に誘いました。最初は自分でも理解出来なかったのですが、それは少しの間、あなたと過ごして分かりました」 パッとイーチェが顔を上げる。 その目は幼いながらも真剣で、その黒い瞳は真っ直ぐにウィリアムを見つめていた。 「きっと、私は寂しかったと思うんです。普段では強がっていましたが、どこかで人の温もりを求めていた。強引に誘ったのも、誰かに相手をされたかったから。パパやママのように、私を見てくれる人が欲しかったから。それが、他人であっても。だから―」 「もういい。分かった… 分かったから涙を拭きなさい」 「えっ…」 イーチェは目元に手をやる。 そして彼女は確かめるように、指についた水滴を見つめた。 「…あれっ? 何で私… もう泣かないって決めたのに…」 溢れ出す涙を必死に拭って止めようとするが、一度氾濫した川は勢いを増す。 ウィリアムは黙って席を立つと、イーチェの背後に回り、彼女の頭に手を添えた。 「イーチェ、君は強い子だ。だけど、辛いときや悲しいときは我慢しなくてもいい。泣きなさい。泣けば少しはマシになるから」 「うっ… うぅ… うわ~ん!!」 イーチェは後ろにいたウィリアムに抱き着いた。 ウィリアムは優しく彼女を受け入れると、そっと頭を撫でてやる。 きっと彼女はずっと我慢して来たのだろう。 こんな山奥で、誰にも甘えることが出来ず、ずっと堪えてきたのだろう。 まだ親に甘えたい年頃だろうに。 それさえも出来ず、ずっと一人で暮らしてきたのだろう。 ウィリアムはイーチェが泣き止み、落ち着くまで、ずっと彼女の側にいたのだった。
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