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「初めてあなたを見つけた時、こんな所にも人が来るんだって…
それで、あなたは旅人で野宿をしていると聞いて、更に嬉しくなりました…」
イーチェは顔を俯けながらも、話を止めない。
「そして何故だか私はあなたを家に誘いました。最初は自分でも理解出来なかったのですが、それは少しの間、あなたと過ごして分かりました」
パッとイーチェが顔を上げる。
その目は幼いながらも真剣で、その黒い瞳は真っ直ぐにウィリアムを見つめていた。
「きっと、私は寂しかったと思うんです。普段では強がっていましたが、どこかで人の温もりを求めていた。強引に誘ったのも、誰かに相手をされたかったから。パパやママのように、私を見てくれる人が欲しかったから。それが、他人であっても。だから―」
「もういい。分かった… 分かったから涙を拭きなさい」
「えっ…」
イーチェは目元に手をやる。
そして彼女は確かめるように、指についた水滴を見つめた。
「…あれっ? 何で私… もう泣かないって決めたのに…」
溢れ出す涙を必死に拭って止めようとするが、一度氾濫した川は勢いを増す。
ウィリアムは黙って席を立つと、イーチェの背後に回り、彼女の頭に手を添えた。
「イーチェ、君は強い子だ。だけど、辛いときや悲しいときは我慢しなくてもいい。泣きなさい。泣けば少しはマシになるから」
「うっ… うぅ… うわ~ん!!」
イーチェは後ろにいたウィリアムに抱き着いた。
ウィリアムは優しく彼女を受け入れると、そっと頭を撫でてやる。
きっと彼女はずっと我慢して来たのだろう。
こんな山奥で、誰にも甘えることが出来ず、ずっと堪えてきたのだろう。
まだ親に甘えたい年頃だろうに。
それさえも出来ず、ずっと一人で暮らしてきたのだろう。
ウィリアムはイーチェが泣き止み、落ち着くまで、ずっと彼女の側にいたのだった。
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