序章

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「待って下さい! 実の息子よりも宰相を信じると言うのですか!?」 ウィリアムは立ち去るオーギュストに向けて言うと、オーギュストは歩みを止めウィリアムを見る。 「少しでも謀叛の疑いがあれば斬る。それがこの国の掟だ。儂の兄も、謀叛の疑いで殺された。まさか儂の息子もそうなるとは思わなかったが…残念だ」 それだけ言うと、オーギュストは再び歩き出し姿を消した。 「皆の者、この反逆者を捕らえよ!」 ヨロキがそう叫ぶと、兵達が槍や剣を持ってウィリアムに襲いかかった。 「……………」 うなだれるウィリアムに一人の兵が手をかけようとした刹那。 「ぐあっ!」 兵の胴に一本の槍が突き刺さる。 「ウィリアム様には指一本触れさせんぞ!」 その場にいた者が一斉に声の方向を見る。 そこには抜き身の剣を構えたカルロスが仁王立ちしていた。 「カルロス、貴様!陛下を裏切る気か!」 ヨロキがカルロスに向けて言う。 「黙れ、逆賊! 私は私の忠義を尽くすまでだ!」 「ええい! 皇太子もろとも奴を殺せ!」 ヨロキの命令に兵達が突撃した。 カルロスは向かってきた兵の首を斬り落とすと、見せつけるように切っ先に刺し掲げた。 「命が惜しくない者は懸かってこい!容赦はせぬぞ!」 カルロスのその鬼のような形相に、兵達は怖じけづき、後ずさる。 「や、奴一人に何をもたついておるのだ! 早く殺せ!」 ヨロキは顔を真っ赤にしながら、兵達に命令する。 「う、うおおお!」 一人の兵士がカルロスに突進し、そのままの姿勢で槍を繰り出す。 カルロスは後ろに一歩下がると、紙一重で槍の突きを交わした。 そしてすれ違うと同時に相手の背中に一太刀入れた。 兵士はそのまま絶命する。
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