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その後も、カルロスは向かってくる兵達を一人、また一人と斬って行く。
それはさながら、薄い紙でも切り裂くようだ。
「ウィリアム様、早くこちらへ!」
この場にいる兵士達をあらかた片付けたカルロスは、ウィリアムを手招きした。
ウィリアムは今まで呆然としていたが、手招きするカルロスの姿を見ると、慌ててそちらに駆け出す。
カルロスはウィリアムの手を引くと、王座の間から出て、城の外を目指す。
「カルロス、これからどうするのだ!?」
ウィリアムは走りながら、前を行くカルロスに尋ねる。
「ウィリアム様にはこの国から脱出して頂きます! 隣国のランスは私の知人がおり、その者を頼ろうかと!」
二人は兵達が控えていると思われる、正面口を避け、城の裏口へと向かう。
途中、何人かの兵士と出くわすがカルロスの見事な斬撃の前に倒れて行く。
そして裏口に繋がる通路に差し掛かった所で、ヨロキの指揮する兵達に発見されてしまった。
そのヨロキ配下の兵達は甲冑を身に付け、大剣と盾を装備し、カルロス達を追い詰めて行く。
「反逆者ウィリアム アメストリア。カルロス リッチェルに告ぐ! 直ちに武器を捨て、投降しろ! 今ならまだ間に合う!」
ヨロキは兵達を押しのけて、前に出ると大きな声で言った。
「ウィリアム様、惑わされてはいけませぬぞ! …このまま裏口に進めば、厩があります。その馬に乗って西に向かって下され」
「カルロスは… カルロスはどうするんだ?」
ウィリアムが尋ねるとカルロスはニコリと笑い、懐からある物を取り出し、ウィリアムに渡した。
「私の家に代々伝わる短刀です。これをお持ちになって下さい。…何、私は大丈夫です、すぐに追い付きますので…」
「カルロス、お前っ…」
「行って下さい! 早く!」
カルロスはウィリアムの体を強く押すと、鞘から剣を抜く。
ウィリアムはカルロスのしようとしていることと、覚悟を汲み取ると裏口に向かって全力で走り出した。
「ここからは鼠一匹通さぬ! このカルロス リッチェルの誇りに誓って!」
カルロスが言い終わると同時に、ヨロキの兵達が突撃した。
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