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恵奈がそっと声を掛けてくれる。
その優しさが悔しくて悲しくて……
「恵奈は…」
「ん?」
「恵奈は平気なの?東高だよ?此処から遠いじゃん!!勉強だってっ…」
声を少し上げて言っていた。
教室はガヤガヤと皆の声で私の声は全体に広がることはなかったが、それでも席が近い人には聞こえていたと思う。
けれど私には周りを気にするような余裕はなく、恵奈に詰め寄っていた。
「鈴!」
「……っ…」
恵奈は、私を落ち着かせるように私と同じように声を上げていた。
私が聞けるようになったと判断すると恵奈は口を開いた。
「一番鈴が判ってる筈よ?………私は東高じゃなきゃ駄目なの…遠いのは承知。あそこ寮もぁるから…もし通うのが大変なら寮で暮らす…」
「ケドっ」
「勉強は確かに大変だけど、その分自分の為になるから…」
「………」
恵奈は私の肩に手を乗せて云う。
その手は力が入ってて私は黙るしかない。
「鈴は、なんで南丘高行くの?」
「それは……」
私は答えるコトは出来ない。
恵奈と同じで夢の為だから……
「鈴…高校が違うからって私達の縁が切れる訳じゃなぃのよ…」
「判ってるっ」
「……大丈夫よ」
「……ふっ…ぅ」
「はぃはぃ…泣かない泣かない」
頭を撫でる優しい手に私は涙が溢れた。
いつも恵奈は私の前に立ってる。
私が足を止めてしまうといつも待ってくれた
恵奈はそんな優しい人。
ケド、人一倍弱音を吐かないから…
私は恵奈の手を握って少し笑ってみせた。
「恵奈も泣いてィィんだよ?」
恵奈も同じように思ってくれてるから
だから、
「ふふ…馬鹿ね……泣かないわよ…鈴じゃあるましい…」
「ああ!今馬鹿にしたっ」
「馬鹿は馬鹿なのよ」
「酷いよ~」
掴んでいた手をベシっと叩いて些細な抵抗をする
痛いと言ってるケド気にしない。
私を馬鹿にしたら痛い目会うんだからっ!
「鈴…」
「何?」
「最後の学校生活、沢山思い出作ろうね」
「もちろん!」
二人で笑った。
私まだ気持ちは一緒に居たいと思ってる。
ケド、大丈夫。
残り僅かな時間。思い出作って、高校に入ったら自慢してやるんだ。
大親友の幼なじみのコトを。
そんなコトを今は思う。
私はまだ見ぬ高校生活に気持ちは膨らんでいった。
終わり
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