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「その真珠は」
転校生の話はどこまでも唐突で、突拍子も無い。あたしはリズムが掴めない彼女を不快に思った。
真珠について彼女は触れた。あたしはああこれ、と真珠に手を当てた。
本当は触るだけで汚れてしまいそうだから触れたくないけれど、見せ付けたいからそうした。
誕生日に両親がくれたの、とあたしは言った。
転校生の返事はわかりきっている。そう、だ。
さすがに何度も淡白な返事をされるとあたしの寛大な心も苛立ちを隠せなくなる。
あたしはちょっと、と言った。
彼女は何、とだけ言った。どこまでも涼しい顔で、納得行かない。
あんた、自分から聞いておいてその返事は無いんじゃない?
あたしは言った。転校生は少し黙る。
してやった、と思った。押し黙ってしまえばこちらのものよ。
低俗な人間はそう、いつもそう。都合の悪いことは全て沈黙を貫くの。それがあたしには不愉快この上なく、汚い手段だと思った。
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