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僕は彼女の許可も取らず、彼女の手をとって走り出していた。後ろで彼女の愛らしい悲鳴がする。
何の考えもなくこんなことをした。今思えば、あまりに強引だった。でも僕は、とにかく僕は、彼女を手放したくなかったのだ。
「僕はクリストファー・ロビンス。クリスって呼んで」
こんなときに自己紹介なんて、なんのつもりだろう。そう思った。でもこのときの僕は冷静ではなく、とにかく彼女と仲良くなりたい一心だった。
君は? と僕は聞く。彼女はちゃんと応えてくれるだろうか。僕の行動はどこまでも身勝手で、早すぎる。
「……メグよ。よろしくね、クリス」
彼女は僕の名前を呼んでくれた。それがすごく嬉しくて。こんなことで喜ぶ僕は、やはり弱気なんだろうか。他人が見たら笑いそうだ。
それでも僕は良かった。彼女が僕を嫌がっていないこと、僕の名前を呼んでくれたこと、名乗ってくれたこと、すべてがプラスに捉えられたから。
それが僕とメグの出会い。
それから二年。僕らは何度か会い、やがて僕のほうから思いのたけの告白して、メグが受け入れた。付き合ってからは、だから一年くらいだ。
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