翡翠

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 私は言動の不一致に戸惑いながらも、私の名を告げた。すなわち、ヒスイと。  少女は納得したようにふうん、と言った。何故納得したのか、私にはその時点ではわからなかった。 「瞳と同じ名なのね。綺麗よ」  その言葉に私は動揺した。彼女には私の瞳が見えていたと言うのか。驚きで言葉を失った私に、少女は言った。 「私には見えるの。貴女が見せたいものから見せたくないものまでね」  その言葉に私は後ずさった。彼女が持っているのは、もしや……「千里眼」か?  透視能力を有する人間がいるとは何度か聞いたことがある。しかしどれも偽者で、私は信用しなかった。よもや本物の「千里眼」を持つ人間がいようなど、私には信じがたい事柄だった。  彼女に私は恐る恐る、どこまで見えるのか、と尋ねてみた。少女は笑顔を消して、無表情のまま答えた。
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