プロローグ

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「おい!そっち行ったぞ!」  初夏の風が吹き抜け、月と外灯が辺りを淡く照らす。そんな住宅地の真ん中の駐車場に男の声が響く。  その声に反応した僕は、素早く体を反転させ「ヤツ」の姿を視界に捉える。    「ヤツ」の姿を見て僕の動きはぴたりと止まった。  それはゴキブリを見た時の嫌悪感に似ていたが、「ヤツ」はゴキブリとは比べ物にならないほど凶悪だ。  個体のような液体のような質感で全長3メートルはある黒い巨体は、4本の足で支えられたり、絶えず脈動を繰り返している。    加えてアスファルトの地面に何か黒い液体を全身から滴らせているのもグロテスクである。  それだけでも不快感を与えてくる生物なのだが、見た目以上にひどいのが「ヤツ」の呼気。  これがとてつもなく臭い。
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