†Sound†

2/9
前へ
/11ページ
次へ
あの時の自分は、本当に油断していたんだと思う。 昼休みに屋上で昼御飯をすませた俺は、コンクリートの床に寝転がって流れる雲を見ていた。 春が近づいてきて、日差しは暖かくなってきたが、風通しのいい屋上は俺以外誰もいない。 昼休みにサッカーでもしているのか、グラウンドから賑やかな声が聞こえてくる。 俺はその声を聞きながら、目を閉じた。 穏やかな時間が、ゆっくりと過ぎていく。 友人や弟からは年寄り臭いと言われるが、俺はこんなのんびりとした時間が好きだった。 (なんか、急に歌いたくなったかも) 周りには誰もいないし、少しくらいなら大丈夫だろう。 俺はそう思って、浮かんできたメロディーを口ずさんだ。 それが、俺のこれからの人生を一変させるとは知らずに――。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加