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気がつくと交差点に立っていた。
いつもなら人が溢れてて、前の人の背中しか見えないのに、今日は向かいの電気屋さんや靴屋さん、その先のデパートの入口も見える。
早い話が人がいない。私以外誰も。
「すいませーん!誰か居ませんかー?」
叫んでみるけど、ビルにこだまする自分の声しか聞こえない。更に言うなら車やバス、電車すら動いていない。太陽は頭の上を少し過ぎたくらいなのに、信号機だけがシステム通りに切り替わる。
信号機が動いてるってことは、電気系統の制御はそのまま生きてるみたいだから、とりあえずは街を歩いてみることにした。
いつもは入らないショップに立ち寄り、声をかけるけど返事はない。
今まで着てみたかったけど勇気が無くて着れなかった服がたくさん並んでるのに誰もいない。
「誰もいないならもらっちゃいますよー…」
罪悪感に苛まれながらも適当に洋服を選んで試着室て着替える。なぜか私は白い浴衣を着ていた。選んだ服は背中が開いていてかなりセクシーなワンピース。普段は絶対に買わないけど、今日はちょっとだけ冒険してみよう。袖を通すと、気持ちもちょっと明るくなった。
誰もいないならひとりで楽しんだら良い。
どこかに行く途中だった気もするけど、きっと遊んでるうちに思い出すはず。
隣の靴屋さんで前から履いてみたかった長めのブーツを履いて、ゲーセンのある通りに出た。
ゲーセンのある通りはさっきの場所と違って少しだけ生きてる匂いがした。
誰もいないはずのゲーセンから、かすかに笑い声が聞こえる。
もしかしたら私を行きたい場所とは違う所に連れて行ってしまう奴がいるのかもしれない。なぜかそう思った。
そう思ったのに、誰がいるのか確かめたくてゲーセンを覗いてみた。
影が3つ。クレーンゲームで遊んでいる。特に嫌な感じもしなかったので私もゲーセンに入り、違うクレーンゲームで遊んでみることにした。
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