0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あー!人がいるー!」
見つからないようにしていたのに光の速さで見つかってしまった。この人たちがいい人なのか悪い人なのかわからないので、仕方なく背を向けて走る。
しかしすぐに腕を掴まれつかまってしまう。
「俺らは君にひどいことをしたりしない。だから逃げなくて大丈夫だよ」
懐かしい声が頭の上から降りかかる。見上げると懐かしい面影。
「あ…あ…」
誰だっけ…?この人を知ってるのに名前が出てこない。とても愛おしくて大切で、忘れちゃいけない人だったような気がするのに出てこない。
「何々?雅の知り合い?」
奥からもう一人、鍵の束を持った男が出てくる。まるっきりホストのような格好で、ゲーセンがよく似あっている。
「雅の?マジ?」
ファッション雑誌から抜け出てきたようなギャルが私を見る。この子に比べたら今の私って似あわないギャル服を着た動物園の猿見たいなんだろうなと思うとちょっと悲しくなってきた。
「この子、きっと新しい子だよ。俺も見たことないし、ヤスもスイも見たことないんだろ?だったら最近ついた子だよ」
「さっき気が付いたら駅前の交差点にいて、ここなら誰かいるかなって思ってきただけだから。ここにあなたたちがいるってことはきっとほかにも誰かいるはずだから探しにいくわ」
雅と呼ばれる男の手を振り払って出入り口に歩を進める。
今度は大きな腕が私の行く手を阻む。
「もうすぐ夜が来るから危ない。明日探しに行こう。今日はもう寝るところを探さないと…」
そう言って私を抱えあげる。重たいはずなのにふわりと抱えられてしまう。
「ネカフェに行こう。暗くなるとまたやつらが来るかもしれない」
スイとヤスの顔が引き締まる。
「やつらって?そもそもここはどこなの?」
問いかけには答えてもらえない。着いたら話してあげるとなだめられ、抱えられたまま本日の宿、ネカフェに運ばれた。
最初のコメントを投稿しよう!