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白夜ってこんな感じじゃないだろうか。太陽はのぼってないのに空だけが白くて、とても心細くなる空。
寝床はすぐに決まった。繁華街なだけあってインターネットカフェがそこら中にボコボコあった。もちろんどこも無人で、でもさっきまで人が居たような気配がする。しばらく歩いて繁華街の外れに来た。そこにあるインターネットカフェが今日の宿になった。
「俺らはこのフロア使うから、雅と新入りは上な」
ヤスの指示にしたがい分かれる。フロアを分けた方が何かあった時に対応しやすいから、それは賛成だった。しかし、心の隅では何かが引っかかる。無人なのに何かが起こるわけない。でも、もうすぐ何か起こりそうな気がして落ち着かない。そんな様子を察知したのか、雅が私の頭をなでる。
「俺たちは大丈夫。今日のターゲットは多分、ヤスかスイのどっちかだろうから」
「何が起こるの?あなたは知ってるんでしょ?ここがどこなのか」
頭の手を払いのけ雅の目を見る。驚きと悩みの混在する瞳。
「とりあえず、座りましょう」
オープン席に座る。私は彼が口を開くまで待つ。思ったよりあっさりと、彼は言った。
「ここは、三途の川。俺は病気でリアルでは意識不明で、ここでの時間と向こうでの時間が同じなら、もう半年くらい寝てるはずだ。みんな死にかけてここにくる。そして襲撃されて死ぬ…」
なんとなく分かってた。予想通りというか。
「もとのところに戻る方法は?」
驚かない私に驚きながらも答えてくれた。
「電車が人を連れてくるから、電車に乗ればいいはずだ。でも電車がいつ発車するかはわからないよ」
「今日、動く気がする。ね、すぐヤスとスイを連れて行こう!」
雅は戸惑っている。永くここで過ごした自分に分からないことを私みたいな来てすぐの人が言っても信用できないはず。でも、私は帰りたいから、悩む必要もなかった。出口に向かって走り出す。今度は雅は止め損なった。雅の手をすり抜けて下へ降りる。その時、階下から悲鳴が響いた。続いて暴れる音、グラスが割れる音。静かになったので顔を出してみた。そこには襲撃の痕が残っていた。
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