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「大丈夫!?」
慌てて雅も来る。目の前の光景に息をのむ。床には濡れた跡。人の足の形の水たまりがたくさん残っている。
「あの世に連れてく橋渡し役がいてさ、むりやり着替えさせて川を渡らせるの。多分そいつらよ」
もうたくさんだ。死んでまで怖い思いをするなんて。
「私は帰るわ。一人ででも」
外に出る。駅とは反対方向に足跡は続く。あっちが死者の世界なら、単純に背を向けて歩けばいい。私は駅に向かって歩きだす。夜明け直後のような静かな街。どこから何かが出てきてもおかしくない。精一杯注意して歩く。3人に会ったゲーセンを越えて駅へ。雅はついてきてない。少し残念だった。
駅には電気がついていた。しかしまだ電車はない。時刻表もない。でも、遠くからエンジンの音が聞こえてくる。改札に手をかけたとき、その上からまた手が出てくる。
「奴らは電車も運転してる。ここに居たら見つかるぞ!」
改札を抜けて売店の中に隠れる。しばらくすると電車が来た。目の前のホームに入ってくれた。ドアが開くとかなりたくさんの人が出てきた。みんな改札を抜けると消えていく。
しばらくすると誰も居なくなった。行き先表示が赤から白に変わった。
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