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きっとこれで向こうに帰れる。売店から出ようとしたら止められた。
「よく見ろ!運転手がまだ残ってる。もうすぐ出そうだからもう少し待って」
「待ってらんなーい」
上から違う声が降ってくる。
「なんで逃げてんの?あそこに居たらこんな目にあわなくてすんだのに!」
慌てて売店から飛び出す。飛び出すと売店は粉々に吹き飛んだ。砂煙の中、出てきたのはスイ。真っ白な着物を着て、鎌を構えて、真っ赤な目が私を捉える。
「雅だけでも十分うざかったのにあんたもまだ帰ろうとするわけ?もう火葬されてるから無理よ!」
彼女の顔の皮が剥がれ落ちる。白くひび割れたドクロがそのまま私たちを見ている。
「自分の体は自分が一番良く知ってる。まだ火葬なんてされてない!だから帰れる。帰ってみせる!」
私はスイに背を向けて電車に走った。今まで私が居た空間が風をきる音を立てる。立ち止まったら終わる!!
「死んだんだから!死んでるんだから!」大きく振り上げられる気配。振り下ろされる直前で、私は電車に駆け込んだ。スイは舌打ちすると雅に向き直った。どうやら電車の中までは追えないらしい。
「雅!早く!」
呼ぶけれど彼は来ない。来れない。スイがホームで立ちふさがってるから。
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