第一夜

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夢のなかを澄んだ川が流れていた。 私はその川を辿ってどこまでも進んだ。 車で山を越えると街があった。 何度も夢に出てくる、大きな街だった。 屋内駐車場で車を降りて、川を探した。 いくつもの建物が蟻の巣のように連なって、 その街は全体が迷路のように入り組んでいる。 どれだけ歩いても外に出られなかった。 がらんとしたビルの地階まで下りていくと、 大柄な女性がガラス戸の前で私を手招きした。 ビルから出られると思うとほっとして泣きそうになった。 そのガラス戸は誰も使っていない裏口だった。 通る人がいないので手すりがぴかぴかしている。 私を待ち構えていた女性と一緒に外に出た。 外と言っても地下になっていて、 立ち並んだ大きな柱が影を作っているから薄暗い。 彼女の指さす方向に、私はやっと川の流れを見つけた。 それはビルと同じ敷石で囲まれた用水路だった。 私は一瞬、かなしくなった。 けれども案内人の女性は微笑んで、もっとよく見るように促す。 流れを見つめていると、それが山で見たのと同じくらい清冽で豊かな水であることがわかった。 川は整備され、地下に潜り込まされながら それでも美しい水を湛えたままに街を通り抜ける。 街を出て、やがて雑木林や草原を流れるとき、 川は再び自然の姿を取り戻すだろう。 私は寺院のようなその地下で、 いつまでもひざまずいて流れを覗き込んでいた。 透明な水がうねって控えめに輝き、 時折こぽこぽと笑うような音をたてるのだった。
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