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放課後。 俺と譲は自販機に飲み物を買いに行った。 放課後ともなると自販機のある給湯室には人は誰もいなくて、すぐ横のグラウンドから部活動中の生徒達の声が聞こえるだけだ。 各々飲み物を買おうと数台の自販機を眺めていると、窓の外から男の声がした。 「田中ー!翔平はー?」 "翔平"の名前に、俺はぴくりと反応する。 反応は示さないけれど、俺の隣にいる譲にも当然聞こえているはずだ。 「翔平ならさっき部室行ったぞ。」 声の主はどうやらサッカー部のやつのようで、窓の開いた給湯室には声が丸聞こえだ。 早くこの場から去りたいけれど、何も買っていないのにここから出るのは不自然なので俺は適当なジュースを選んでボタンを押した。 「え、まだ部室にいんの?長くね?」 「菊池も部室にいるから、なんか話でもしてんじゃねぇの?」 「菊池も?じゃあふたりっきりだな。」 「何?その意味深な感じ。」 「お前知らねーの?菊池って翔平のこと好きじゃん。」 「え、そうなの!?」 「しーっ!」 低い植木のせいで、外から俺達のことは見えない。 男ふたりは少し抑えた声で話し始めた。 「見てりゃわかるだろ。まあ本人は多分気づいてないだろうけど。」 「だろうなー。翔平も菊池のこと可愛いとは言ってたし…こりゃカップル成立かもな。」 「俺めっちゃ冷やかしてやろー。」 興奮気味の話し声が遠ざかっていくと、自然と無口になっていた俺達の間の沈黙が目立つ。 と、突然譲が踵を返して走り出した。
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