16/20
前へ
/20ページ
次へ
靴を履き替えるため下駄箱へと向かうと、そこに座り込んでいるやつがいた。 心臓が痛いくらいに跳ねる。 「…!涼っ!」 会いたくなかった。 けど、会いたかった。 息苦しいくらいに胸が締め付けられて、何も言えなくなってしまう。 「…あの…靴、あったから…いると思って、待ってた。」 少しの沈黙の後、譲がおずおずと話し始めた。 何も聞きたくないのに、譲の声が聞けたのがこんなにも嬉しくて。 自分の中の矛盾に、自分でも戸惑った。 「…何?ジュース代ならもういいよ。」 「そ、じゃなくて…」 「じゃあ何?翔平のこと?」 「……」 困り顔で俯いてしまった譲。 我ながら嫌味すぎて引く。 「…ごめん。でも俺、ほんとはこんなやつだから。もう、笑顔も作れないし。優しくも出来ない。ごめんね。」 「涼!」 譲の横をすり抜けて、自分の下駄箱に手を伸ばす。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

412人が本棚に入れています
本棚に追加