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靴を履き替えるため下駄箱へと向かうと、そこに座り込んでいるやつがいた。
心臓が痛いくらいに跳ねる。
「…!涼っ!」
会いたくなかった。
けど、会いたかった。
息苦しいくらいに胸が締め付けられて、何も言えなくなってしまう。
「…あの…靴、あったから…いると思って、待ってた。」
少しの沈黙の後、譲がおずおずと話し始めた。
何も聞きたくないのに、譲の声が聞けたのがこんなにも嬉しくて。
自分の中の矛盾に、自分でも戸惑った。
「…何?ジュース代ならもういいよ。」
「そ、じゃなくて…」
「じゃあ何?翔平のこと?」
「……」
困り顔で俯いてしまった譲。
我ながら嫌味すぎて引く。
「…ごめん。でも俺、ほんとはこんなやつだから。もう、笑顔も作れないし。優しくも出来ない。ごめんね。」
「涼!」
譲の横をすり抜けて、自分の下駄箱に手を伸ばす。
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