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ようやく日誌を書きはじめた譲の指先を目で追った。 細い指からだんだんと目線を上げていく。 柔らかそうな黒髪、伏せた目の長い睫毛、白い肌。 譲が気づいていないのをいいことにここぞとばかりに観察してやる。 「…ねぇ。」 急に譲が顔を上げるので、咄嗟にいつものヘラッとした笑顔を作った。 「何?」 「涼がそこにいると、暗くて書きにくいんだけど。」 確かに俺が立っているせいで、電気のついていない教室の唯一の光が譲のところだけ遮られている。 「…そーんなに翔平のことが見たい?」 「ちが、う!」 冗談半分で言ったのに、譲が本気で慌てるから面白くない。 「まあまあ。俺には隠さなくていいでしょ?」 「だから見てないって!」 ムキになって怒るくせにほんのり赤く染まった頬に気づいて、顔に張り付いた作り笑いがはがれそうになる。
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