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カーテンに映る人影はすでに無く、たまに羽の影が見えるだけ。ちゃんと天使がいないのを盗み見て言ったのだ。 「そうだな。帰るか」 「うん」 一足早くヤルムが教室から出る。 もう自分以外誰もいない教室。クウはカーテンを開けた。 空に天使の姿はない。あるのは雲と羽毛だけ。 「ちょっと残念……」 見たかったんだけどな。天使の姿。 天使に憧れていた。子どものときからずっと。 でもそれは、叶わぬ願いだった。 「クウ?」廊下から声が聞こえてきた。 「今行くよ!」 カーテンを元通りにし、教室を出る。ヤルムは扉のすぐ側にいた。 「なにしてたんだよ」 「カーテン直してたの」 「そんなのいいじゃん。どうせ警備員が直してくれるよ」 「ダ―メ。使った人が直すのは常識です」 もうほとんど人気の無くなった廊下を歩く。 くだらない会話は廊下に乱反射してから、そっと消えた。  
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