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学校から歩いて10分ほどで店が立ち並ぶ道にでる。さらにそこから20分ほど歩いた場所に、クウの家はあった。 エゼル高原という小高い場所に建てられた家だ。 クウの周りにほかの家は無く、ポツリと一件だけ建てられている。 なんというか、あまり場所がよくないのだ。 スーパーから離れすぎているため買い物に不便だし、すぐ後ろは森。 クウの前は広大な草原になっており、行事のときよく使われてる場所ではあったが、ほかに使い道が見つからず、家を建てるわけでもなくただ放置していた。 お祭のときは騒がしい草原も、なにもない日は静寂で溢れている。 クウはトボトボと草原を突き抜け、家に入った。 共働きのクウの家。帰っても一人である。 クウはすぐ自分の部屋に行き、志望校調査用紙を机の上に広げた。 進学か就職か。 理系か文系か。 そんなこととっくに決めている。 だが、ペンは用紙の上を滑らなかった。 「僕なんかが行ける大学や会社ってあるのかな……」 ポツリと言った独り言。言ってて自分で落ち込んだ。 翼が小さいと飛べない。飛べないということは、移動時にほかの人に比べて何倍も劣った。 頭はそれなり。だから進学で困ることはないだろうが、飛行の授業はいつも見学。 マイナスにならないことを祈るだけである。 クウは翼を動かした。やっぱり揺れた程度しか動かない。 「天使……か」 ペンを筆箱にしまい、ベッドに飛び込んだ。 あとにしよう。お母さんが帰って来てから書こう。 クウは目を閉じた。 家に一人でいるときは、いつも寝付きが悪い。 眠ることなくクウはジッとしていた。  
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