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音も無く隣りに降り立った親友を見て、クウ・ライトセレクは顔を綻ばせた。
若草より鮮やかな緑の髪を持つ彼。よく女子と間違われるが、それはこの華奢な体型と顔立ちであろう。
腕も足も転んだだけで折れるのではないかと不安になるほど細い。体も小さく、声変わりしても高い声。
さらに拍車をかける中性的な顔つき。ジーパンを履けば男子、スカートを履けば女子に見えるなんとも不思議な顔をしていた。
「おはよ。ヤルム」
「はよ」
若干疲れた表情で翼を折り畳むヤルム・ニドルエイユ。ため息と共に翼を手入れする彼を見て、クウは思わず噴出してしまった。
「……なにがおかしいんだよ」
「いや、別に。また寝坊かなって」
「……そうだよ。ま、た、寝坊だよ」
「怒らなくてもいいじゃない。こうやって間に合ってんだから」
眉間にシワを寄せているヤルムに対して慰めるように肩を叩く。
まだヤルムは口を尖らせていたが、わざとそうしているように見えた。
なんというか子供っぽい。
今2人がいる位置からは、目指すべき校舎がはっきりと見える。
徒歩で5分とかからない距離だ。校舎中央にある時計塔は、まだ予鈴が鳴るまでには余裕がある時刻をさしている。即ち、このまま歩いても遅刻することは絶対にあり得なかった。
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