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資料室はクーラーが効いていないのにも関わらず、地下にあるため涼しかった。
ドアの前はなにも無い。だが、そこから5歩でも離れれば分厚い本が詰まった棚がいくつも並んでいた。
電気は無かった。だが、壁と床に埋め込まれている発光石により、中は明るい。
資料室には重要な本も揃っているため、傷まないように一番温度差の少ない快適な部屋を当てていたのだ。
図書館に比べて、資料室はそれほど広くない。少年達はすぐに目当ての場所にたどり着くことが出来た。
「貸出禁止……この辺りか」
「だろうな」
『貸出禁止』。墨でそう書かれた仕切りをくぐり、奥へと進む。
そこはさらに涼しく、ホコリっぽい。入ったとき軽くむせた。
「えっと……」
ほとんど人が来ない場所なのだろう。発光石の数が極端に少ない。懐中電灯など持ってこなかった少年達は発光石の僅かな灯だけで目的のものを探す。
2人で手分けして探しているのだが、目が慣れるまではよくつまづいていた。
「無い……か?」
「いや、絶対ある」
しばらくすると目が慣れてきた。それを皮切りに、それらしき本をパラパラと捲ってみた。
どれも相当年季が入っているもので、捲るたびに破れないかとハラハラする。
緊張感から背中には冷や汗がにじむが、すぐに冷えて寒くなった。
「―――あった」
短く、1人が言った。
短いが、興奮が押さえ切れない声だった。
「これだろ? 不死鳥」
1人が本を見せる。そのページには鳥が一羽描かれていた。墨で描かれている鳥は、黒なのに炎を現していると一目でわかる。
鳥は両翼を高く上に突き上げ、口からは炎を吐いていた。
「『不死鳥召喚呪文』。間違ない、これだ」
2人は顔を見合わせて、笑った。
「これでテストが受かるぞ」
「さっそくやろうぜ」
「待て。召喚にはある程度の場所が必要だ。ここじゃ狭すぎるし、本を傷付けるとあとあと面倒だ。移動しよう」
「移動って……どこに? あんまり離れた場所にいくと、本返すときに面倒だぞ」
「大丈夫だ。すぐ近くだから」
パタンと本を閉じる。ホコリが舞った。
「屋上に行こう」
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