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「――ん? 鍵がかかってる」
図書館の扉を開けようかと手をかけたら、ガタンと音がしただけ。動かなかった。
おかしいな。まだ図書館はやってるはずだけど。
事前に配られた図書館の休館日も、今いる扉の横にある張り紙にも、今日が休みという情報は見当たらない。
だとしたら、受付の人がお昼にでも食べに出ただけかも。
職員室に鍵を取りに行こうかと扉に背を向ける。
そのとき、記憶の回路が繋がった。
「忘れてた……。そういえば芯が無かったんだ」
クウ・ライトセレクは恥ずかしげもなく一人ごちた。
昨日から切れていたシャーペンの芯。昨日帰るときに買おうと思っていたのだが、すっかり忘れていた。
今日は授業が少なかったため、予備のシャーペンで乗り切れたが、そのシャーペンも残り芯が少ない。
購買で買おうかと考えたが、昨日から購買は休みなので買えなかった。
「しょうがない、か」
今日は芯を買って帰ろう。宿題の期限には、まだ余裕があるし。
クウが図書館から遠ざかる。
その姿が見えなくなったころ、図書館の扉が開いた。
本を抱えた少年2人。
彼等は誰にも見られることなく、クウと同じく廊下の奥へと姿を消した。
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