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「だいたいさ。めざましが悪いんだよ」
「めざまし時計?」
「ああ。俺のめざましはさ、なぜかクラシックで起こしてくれるんだぜ? あのベルのやつだと起きれるんだけどさ」
「なんでクラシックだと起きれないの?」
クウの素朴な質問を、ヤルムは『なんでそんな簡単なこともわからないの?』とでも言いたそうな目をして逆に訊いた。
「僕は毎日クラシックで起きてるけど。というか、一緒のやつを買ったからわかるでしょ?
あれ、けっこう音が大きかったような気がしたけど?」
「馬鹿だな、クウは。音の大きさで起きれるなら、俺は毎日起きれるよ。なんたって最大の音量にしてんだから」
「じゃあ……なんで起きれないの?」
「だって、クラシックだぜ? 寝るだろ」
「………? 起きるんでしょ?」
「ったく……いいか?」
ヤルムは指を一本立てた。
「まず第一段階だ。これはめざましをセットする」
「うん」
「続いて」もう一本指を立てて、ニ本にした。
「次は、クラシック音楽で目が覚める」
「うん」
「そして次だ。寝る」
「そこだ、おかしいのは。 なんで?」
「だって起きたらクラシックが流れてるんだろ? あんなゆったりとした音楽、寝ぼけたときに聴いたらまた眠りに戻っちまう。
あんま言いたくないが、俺はクラシックが弱点なんだ。聴くと3分で睡魔が襲ってくる」
「それはまた……」
「そんな俺が寝ぼけてるっていう状況で、半分寝てると同義語の言葉の状態でクラシックを聞かされてみろ。寝るだろ」
わかったような、わからないような……。クウが微妙な表情を返す。
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