少女達の夏休み

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 アリスは、後部座席に座り込んでいた。  エンジンの振動が、車内を揺らす。車窓から見える景色は平坦な田園ばかりだ。青々とした稲に覆われた地表の奥に、低い山々が連なっており、高速道路には車がまばらに走っていた。  アリスは座席に投げておいた地図を拾い、高速道路を示す線を指でなぞりながら、運転席に言う。 「ねえ、目的地はどこよ」 「とりあえず横浜かな。このまま真っ直ぐで行けるからね」  そう言って運転席から顔を出した女は笑った。女は薄い黒のサングラスをかけ、長い金髪を緩い三つ編みにしており、紫と黒のチェックワンピースを着ている。 「紫、なんの目的で私達を連れて来たのかしら」  助手席に座る巫女のような服を着た少女は、顔を運転席へ向け、かなり嫌そうな声を出す。 「なんでもいいんじゃない。楽しければ」  ふふ、と笑う紫は、ハンドルを握り締めた。霊夢はダッシュボードに腕を乗せ、頬杖を付く。 「それにしても、外の世界は不思議ね」 「これ、車って言うんだっけか。結構速いんだな」  アリス達が座っている更に奥の席からひょっこりと黒のキャミソールを着た少女が顔を出す。 「なあ紫、私にも運転させてくれよ」 「あら、それは出来ないわ」 「なんでだよ」 「こういう道で車に乗るには免許証というのが必要なの。……って見てもらったほうが早いわね。霊夢、そこのダッシュボードを開けてその中にあるのを魔理沙に渡してちょうだいな」  紫は助手席のダッシュボードを指した。霊夢は、言われるがままにダッシュボードを開けた。中には、様々な身分証明があり、確認せずに魔理沙に渡した。
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