前書

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多分…生まれつきだった。 俺は霊の存在を普通に受け入れていたし、それが当たり前だと思っていたから恐らくそうなのだろう。 明らかに雰囲気は違っていたから、人間と混同する事は無かった。 気付いたのはいつ頃だったか…。 恐らく小学校低学年くらいだったと思う。 家で、日曜だった。 俺が昼食を食べていて、子供の霊がボーっとこちらを見ていた。 だから小学生の俺は、 『食べたいの?はい』 と、霊の前に目玉焼きが乗った皿を差し出した。 霊はただ俺に目を向けるだけで食べようとはしない。 こういう事はままあった。 俺が霊に話しかける事だ。 そこで俺は『なぜこの子は食べないのか?』と台所の母に訊いた。 その頃の俺は“それ”が霊だと分からなかった。 映画やテレビなんかの霊とは違い、 危害を加えることも、喋ることもなかったから霊だとは思わなかったのだろう。 母は、 『いい加減にしなさい!!』 と、急に怒り出した。 俺は何故怒られたのか分からず、ひどく戸惑った事を覚えている。 『そんな子いないのよ! 幼いからと思って今まで付き合って来たけど、もうそう言うのは卒業しないとダメよ!』 それから俺は『確かにいる』と言い張ったが母は断固として口をきかなかった。 それで俺は分かった。 (というか気付いた) 自分以外の奴には“視えてない”という事に… ああ…ダメだな。 俺はこんなシリアスな話は苦手だ…。 まあ、そういう事があって俺は霊の事を口外しなくなった。 全く、小学生だっていうのにヘビーな悩みを背負わされたもんだぜ…。 その頃の他の奴の悩みって言えば、 『憧れのあの娘に告白しようかなぁ…』 や、 『今日の晩ごはんは何にしようか…』 とか、 『友達とケンカしちゃた…どうやって仲直りしよう…』 だの、 俺からしたら、 『平和かっ!!』 という突っ込みが入りそうなものだろう。 しかしだ、 俺もそんな他の奴らに無い能力が誇らしくて、少し優越感に浸ってた。 ほら、分かるだろ? 『俺はお前らとは違うんだぜ!?』 …ってやつだ。
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