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──朝
枕元の時計を見やる。
9時……。
完全に遅刻ですね、ハイ。
「はぁ………」
(目覚ましちゃんと鳴ったかよ……?
それにしても親は起こしてくれなかったのか…?)
と、ここで思い出す。
(そうか…今日は家に誰もいないんだっけな)
立ち上がり悠長にコーヒーを淹れる俺。
ここまで遅刻が確定した時刻だと、
『もうどうにでもなれ』
という心境になるのも無理は無いだろう。
そう言う理由でテレビのニュースを見ながらコーヒーをすする。
「百々槻(ももづき)東高校で女子生徒が溺死……か」
『百々槻東高校』は俺が通っている『百々槻高校』の姉妹高だ。
長いので以下からは、『東高』、『百々高』とさせて貰う。
しかしながらいくら近いからとは言え、
悪いが、赤の他人の死ほどどうでもいい情報はあまり無い。
さほど関心も無く、俺はあくびをしながら家を出た。
誰もいない通学路をサッサと通り、校門をくぐる。
(待てよ…………?)
学校の敷地内入って間もなくピタと足を止め、立ち止まる。
ここで授業中に教室なんかに入りでもすれば無駄に教師に説教されるだけだ。
それならば、教師がいない昼休みの間に侵入した方がお得ではないか。
ふと朝のテレビのニュースを思い出す。
「東高校か……話題作りにでも行ってみるか?」
因みに俺が通っている百々高から、少し東に行った所に東高はある。
時間的にも行き帰りを考えると時間潰しにはちょうどいい。
「さて、ヤジウマと洒落こみますか」
東高へと、勘を頼りに歩き出す。
俺が住んでいるこの『百々槻市』はどちらかと言えば田舎である。
田舎とはいえ、コンビニや店の数には不自由しない。
中学時代から、夜に家を抜け出しては、よく友人と夜の街にくり出していた。
別に不良を気取りたい訳じゃない。
ただ夜まで起きていると親がうるさいのだ。
むしろ俺は筋や礼儀を重んじ、
社会という大衆型人間組織の中で必死に生きる正義の一般庶民だ。
そこら辺のチャラチャラした高校生よりはよっぽど善良的な人間ですよ?
ただ、
夜型であるからして朝は非常に弱い。
前に、
『あんたは吸血鬼か?』
と言われた事があった。
ご名答。
俺は吸血鬼です。
朝が弱くて、遅刻が多くて、プチ不良な吸血鬼です。
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