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アキラの子供を授かってから二度目の病院に向かいながら、私は思った。
(今日は赤ちゃんの心音聞けるかなぁ?)
出産経験のある友達に、
「心音が聞こえるまでは、『妊娠』とは言わないんだよ。」
と言われた事が思い出された。
(心音が聞こえるまでは生きていないって事なのかな?でも…)
身体に変化を感じていた私は不思議な気分だった。
“これから検診して来るね。”
私はアキラにメールを入れ、病院に入った。
病院に向かう時もメールを入れたのに、アキラからの返事はなかった。
(忙しいのかなぁ?)
私は必死に働くアキラの姿を想像した。
(無理しなきゃいいんだけど…)
「大丈夫。元気に育っているよ。」
先生はそう言うと私に赤ちゃんの心音を聞かせてくれた。
『ドクン。ドクン。』
小さいながらもしっかりと脈打つ鼓動に、私は感動した。
(これで、堂々と妊娠したって言える。)
“赤ちゃんの心音聞こえたよ。私達の赤ちゃん、元気に育ってるよ。”
私はアキラにメールを入れた。
私は幸せに包まれていた。
夕方になってもアキラからの連絡がなく、心細くなった私はアキラに電話をかけた。
「お客様のおかけになった電話番号は、電波の届かない場所に…」
私は間隔を開けて何度か電話をしたけれど、結局朝になってもアキラと連絡を取る事は出来なかった。
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