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不安になった私は、彼に相談した。
彼はどんな時も嫌な顔一つせずに私の話を聞いてくれた。今回も。
「携帯電話が壊れたのかも知れないし、あんまり心配しないで少し休んだ方がいいよ。身体に障る。」
(彼の少しぶっきらぼうな話し方もアキラに似ている。)
私はそう思った。
ふっと我に帰り、私はアキラを思った。
(奥さんにバレた?仕事で忙しいの?携帯が壊れたの?)
頭の中を様々な想像が駆け巡った。
「彼は逃げたりする人じゃないんだろう?」
黙り込む私に彼は言った。
「うん。」
私は頷いた。
「じゃあ、心配しないで少し待ちなよ。きっと何らかの事情で連絡出来ないだけだよ。」
何とか気持ちを落ち着けようと彼は続けた。
「うん。」
「彼を信じてるなら出来るよね?」
「うん。」
「いよいよ、となったら俺が自宅に電話してあげるから。」
(早まるなよ。)
彼の言いたい事がわかった。
(大丈夫。二度と同じ間違いは繰り返さない。)
「わかった。少し眠る。」私は電話を切ると横になった。
「お父さん、どうしたんだろうね?」
私はお腹に向かって話し掛けた。お腹を触ると、赤ちゃんの鼓動が手のひらに伝わる気がした。
(私は一人じゃない。)
それから二日が経過したけれど、アキラからの連絡はなく、携帯電話も繋がらなかった。
私の不安は限界に達していた。
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