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“お願い。彼の家に電話してみて。”
そう書かれたジュンのメールには彼の自宅の電話番号が添付してあった。
(本当にどうしたんだろう…)
ジュンから聞いている彼のイメージからは考えられない行動だった。
(でも、このまま彼が消えてくれれば…)
俺は良からぬ思いを打ち消した。出来るのならば堂々と彼女を奪いたかったから。
“わかった。また連絡します。”
(さて、どうしたものか?)
彼女にはそう答えたものの、俺は思った。
(よしっ。)
俺は彼の同級生に成り済ます事にした。
(電話越しだし、わかりっこない。駄目だった時はその時だ。)
俺は彼の家に電話した。
「主人は亡くなりました。」
電話に出た女性が低い声でそう告げた。
俺は言葉を失った。
(彼女を守って。)
彼の声が聞こえた気がした。
俺は彼の奥さんから情報を聞き出すと、お悔やみを述べて電話を切った。
(彼女にどう話そう?)
どう考えても、メールや電話で告げるのは不適切な気がした。
(それに… それじゃあ意味がない。)
彼女の心を奪う絶好の機会を逃したくはなかった。
(彼女を守って。)
どこからかまた声が聞こえた。
(ありがとう。)
俺はその声に答えた。
(俺にチャンスを与えてくれて。)
そして続けた。
(ジュンは俺が守る。)
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