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カモミールティーをぐっと飲む。別ににやける口をごまかすためじゃないわ。私はカモミールティーが好きなの、だからよ。自分に言い訳をしながら、ほっと一息つく。
「ハッ……クシュッ」
後ろから盛大な咳が聞こえた。
「そんな寒い格好でいるから」
やれやれと呆れて振り返ると、彼はガタガタ震えている。
「さみぃ……」
本当に危ない様子に、慌てて寝室から大きめのTシャツと毛布を引っ張り出す。彼に投げると、着るよう指示した。
「匠さんの匂いがするー」
「黙って着るっ」
Tシャツを着た姿が、風呂上がりに彼氏のTシャツを借りて着た女の子みたいで、変な気分になる。袖が5分袖の長さって、この子私より細いんじゃないの……。私はティーカップをもう1つ用意し、カモミールティーを淹れると彼に渡した。
「ありがと」
「医者、行った方がいいわ」
「うん」
彼は力なく頷いた。
「匠さんがついてきてくれるなら」
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