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弟と連絡が取れない。いつもなら、メールをして3日以内には返事がくるのに。
――まさか風邪でも引いたんじゃ!
いてもたってもいられなくなり、いざ看病だと家を飛び出した。
「トモくんによろしくー」
くすくすとおかしそうに笑う彼女に見送られながら。
バケツをひっくり返したかのような大雨は午後になるとすっかり止み、路上にいくつかの水たまりを残した。
「トモ、大丈夫か?」
オートロックのマンションなので、自動ドアを開けるよう呼び出しボタンを押す。しかしトモはなかなか出ない。
――まさか熱がひどくて一歩も動けないんじゃ! しかも俺の名前をつぶやいているんじゃ!
一刻も早くトモのもとへ! その願いが通じたのか、住人が自動ドアをくぐってきた。チャンスを逃すまいと、中に滑り込む。
「トモ」
エレベーターで5階に上がり、久しぶりに訪ねる弟の部屋へ走る。
「トモ?」
しかし弟の部屋のドアは開かない。
――まさか誘拐っ!?
ドンドンとドアを叩く。
「トモ、開けてくれ!」
必死の形相でドアノブをガチャガチャ動かしていると、隣の部屋から人が出てきた。
「うるさい!」
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