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「トモのこと知っているのか? 部屋にいないみたいなんだが、どこにいるかわかるか?」
結城の肩を掴み、ゆらゆら揺らす。長身の結城は、俺とあまり身長が変わらない。ふわりふわり、結城の長い髪が揺れた。
「匠さーん、どうしたの?」
ぽてぽてと、こちらへ来る足音とともに我が弟の声がする。
「トモ!」
結城をどけ、声の方へと向かう。結城は壁に寄りかかり、そのままずるずると床にへたり込んだ。
「げ、兄ちゃん……」
「心配したんだぞ!」
大きめのTシャツ1枚という破廉恥な格好をしたトモに抱きつく。トモは「うぎぃ」とよくわからない声をあげた。
「トモ、熱があるじゃないか! 病院に、すぐさま病院に!」
「匠さーん、変質者だよーう。早く追い出してー」
「トモはお茶目さんだなあ」
はははっと笑っていると、トモは俺の腕をすり抜け裸足で外に出る。結城に声をかけその顔を覗いた途端、俺に疑いの目を向けた。
「何かした?」
「多少揺らした」
腰に手をあて答える。トモはなぜか不機嫌になった。
「早く帰れ」
「お前を病院に連れて行ったら帰るよ」
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