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外で車を待ちながら、空を見上げる。先ほどと変わらぬ青空。そういえば昔、まだ両親が離婚する前でトモと一緒に暮らしていた頃、この空に何度も励まされた。両親の不仲がヒシヒシと伝わってきて落ち込んでいると、トモが隣に来て言うんだ。
――お空が綺麗だよ。
広くて眩しい空を見上げると、なぜだか涙は引っ込んだ。トモの小さな手を握り、アパートのベランダから見た空はいつだって暖かかった。
「湯川さん」
マンションの自動ドアが開き、結城がパタパタと走ってくる。腕には色々抱えられている。
「私も、一緒に、」
「いや、大丈夫だ。気を遣わせて悪いな」
真っ赤な顔は、走ってきたからかはたまた風邪を引いたからか。俺はやんわりと笑った。
「あの、これ」
結城は一緒に来ることを諦めたようで、手に持っていたものをくれた。トモを抱き上げているから、トモの腹の上に置かれたが。
「とっ、トモくんの下着とか、乾いたから」
「ありがとう」
ああ、そういえば。俺は疑問に思っていたことを聞いた。
「トモと付き合っているのか?」
結城はまたリスみたいに目をまんまるにして、首を振る。照れているのだろう。
「結城が彼女なら、トモも安心だ。そうか、結城が義妹になるのか」
それもまた悪くない。
「ち、ちが」
花屋の配達用の車が、俺たちの前に止まる。トモの中学時代からの友人だ。窓を開け、こちらに手を振っている。
「車が来た。じゃあな、結城」
挨拶もそこそこに、車に乗り込んだ。
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