兄と弟

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カーテン越しの朝日が、うっすらと部屋を照らす。 散らかった四畳半の和室。フローリングのカーペットで畳を隠し、木目の壁紙を貼っているので、古いアパートのわりに見栄えは悪くない。 目覚し時計に起こされなかった以外は、いつもの朝と変わらない。 どうして目が覚めたのか、理由はすぐに分かった。 隣りのキッチンから物音がするのだ。 まさか…。 部屋の主はまだ重い体を無理やり起こした。青いパジャマのボタンが半分以上開いてるのも気にせず、小さな体を引きずって部屋のドアを力任せに開ける。 「やっと起きたな、宗谷」 三畳ほどの小さいキッチンでは、グレーのチェック柄のズボンに白いワイシャツ姿の男が穏やかな顔で微笑んでいた。すらっとした長身で、肌は透き通るように白い。銀髪のストレートロングの知り合いなど、ひとりしかいない。
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