5人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「くっ!わらわとした事が、斯様な不埒者に遅れを取るとはっ!」
白い影は夥しい血を流しながら、風をも追い越す程に速く暗闇の山中を駆けて行く。
「わらわが滅せられれば彼の者に対抗しうる者などいない……!!そうなればこの国は」「亡ぼしてくれようぞ。」
声と共に金色の影が目で追う事も出来ない速さで追い付き、二つの影は衝突した。
「ぐうっ!」
白い影が失速し、やがて人の目にも追える程度の速度になると、大木に衝突して止まった。
「くっ、おのれ……。」
大木の下でよろめきながら立ち上がる一匹の狐。
白きその体から伸びる二つの尾は、力無く地に伏している。
最初のコメントを投稿しよう!