火曜日

5/6
前へ
/60ページ
次へ
「いやあ、それほどでも」 「いや、世界一だ。ダウジングですべてを見通せる偉大な予言者だ」 「そんなに持ち上げないで下さいよ。本当もう、占い師だったら簡単に当てられることですから」 「簡単に、ですか?」 「そうそう、簡単簡単」 「簡単に、ですね?」 「そう、簡単。何回もいわせますね」  この好青年の、奇妙な言い回しに気がつくべきだったのかもしれない。といっても、そんな細やかなことに気がつくほど、俺は賢くねえんだよなあ。  賢かったら、占い師なんかしてねえしよ。 「ということは、未解決事件の犯人を占って探すことも、当然出来ますよね」 「簡単簡単」といってから俺は、あれ?何か変だなと引っ掛かった。  好青年は、契約書を俺に見せた。内容は恐ろしく単純なもので、半年間俺は警察の専属占い師になり、犯人を占いで探す業務に就く、と書かれている。半年後に契約を更新するが、基本的には自動更新となる。  なんてこった!  警察まで占い頼りとは、なんて責任感のない奴等だ!近いうちに日本は滅びるんじゃねえか? 「警察と俺との間に、雇用関係が出来上がった、と?」 「あなたは契約の関係上、備品扱いになっていますが、雇用関係に近いです」  占いで犯人なんか見つかるかよ、ボケが!頭に蛆かミミズか蛙でも涌いてんじゃねえねか? 「嫌っていえば、どうなります?この書面だと店と警察との契約だし、僕が自主解雇なりして店を離れれば、この契約書は無効になるんじゃないですか?」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加