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 占いの館なんかに来る奴はクズだ。ミジンコ以下の知能で、簡単にいうと馬鹿だ。当たるか当たらないか判らないようなものに自らの人生を賭けようなんて正気の沙汰じゃない。第一、占い師全員が善良で正直に占っているという考える方が不気味だし、占い師が語ることを丸々信じるのがありえねえ。実のところこいつら、カウンセリングに来てやがる。悩みを聞いて欲しくてウズウズしてやがる。衣食住すべて揃って当面死ぬような事態なんて起こらないような平和な国で、何を悩んでいやがるんだ?内戦でも起きていて迫撃弾が雨のように降っているなら、交差点で右に行くべきか左に行くべきか、それとも真っ直ぐ進むべきかで占い師に聞くならまだわかる。いや、生死を賭けられても占い師は困るだけかもしれない。 「あのう、アキちゃん恋愛について相談したいんですけど。今の彼氏とずっと一緒にいていいのかな、って思ってね」  頭の悪そうな間抜けそうな女が、俺のルームに来やがった。といっても受付で振り分けるから、俺は客を選べない。  目に力を入れ、口角をあげる。初歩的な神秘の微笑み。占い師必須の技術だ。 「恋愛って一番気になるよね。人生を左右したり、幸せになったり不幸になったり。いいでしょう、占いましょう」  俺は口角をさげて目の力を抜き、後頭部に意識を集中させる。神秘の微笑みから、無表情なシャーマンに変身だ。これも占い師必須だ。あとは心理的に有利になればいい。
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