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 俺の占いはダウジング、といっても物真似だ。そもそも、俺にはダウジングなんか出来ねえし。まあ、こいつらには真似事で十分だ。  右手にクリスタルの矢がついた銀のチェーンを持ち、左手は平仮名の表の上に置く。 「今から神にお伺いをしますので、まずはあなたのお名前と、彼氏のお名前をお願いします」  そんな便利な神なんかいるかよ。十九世紀末か二十世紀初頭にドイツで哲学者が絞め殺してたぜ、知ってるか?  もっとも、俺の住むアパートの住人には神が何人かいるし、近所の公園では朝から晩まで延々と酒を飲み小便や大便を漏らしながら「天国やで、かあちゃん。神さん連れてってくれたわ」と呟くおっさんもいるから、二十一世紀に神様は生き返ったのかもしれない。 「名前はアキちゃん。アッちゃんでもいいよ。アキちゃんね、彼氏をね、トモぴーって呼んでるんだ」 「アキちゃんとトモぴーですね。では今から、お二人の運命を神がお告げします」  俺は左手を平仮名の表の上で激しく痙攣させた。が、俺はお告げなんか聞こえない。本当にそんなもんが聞こえたら頭か精神の病気じゃないか。  だから俺は、そこそこ受容可能な話を創作しなければならない。といっても毎回その場で考えていては間に合わない。だからネタをあらかじめ準備してある。 「ごくり。早くアキちゃんに教えて」 「彼氏とは別れた方がいい」 「うそ!アキちゃんとトモぴー、ラブラフなんだからね!」
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