5/6
65人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
 といってもこのままだと金の払いが悪そうだし、いつものフォローをしておくか。 「いいですか、占いは今現在から見た未来が映し出されるのです。あなたが変われば未来も変わるし、彼氏が変われば当然未来も変わるのです。いいですか、未来を決めるのはあなたの力なんです」 「うん、そうなんだよね。アキちゃん強くならなきゃ駄目なんだよね」  女の目に希望の灯がポッとついた。ていうか、最後のこれを聞く為に来てるような奴が多そうだ。  これが俺には最大の謎なんだけど、最後には占いを否定して客はカタルシスを得る。つまり客は、占いを否定するために占いを信じる、という奇妙な行動をとりやがる。 「申し訳ありませんが、お時間になりました。延長なさいますか?」 「ありがとう、アキちゃんね、もう悩まないし、頑張る!今から新しいアキちゃんが始まるのだ」  女は部屋を出ていった。たぶん受付で清々しく三千円支払っているだろう。  料金はだいたい十分千円が相場だ。この占い店は最低三十分三千円からで、延長は好き放題金が続く限り可能だ。取り分は俺が六割、店が四割。一日十時間フルに客が来れば三万六千円になるが、稼働率が二割か三割ほどなので一日占って約七千円から約一万円程になる。  週六日働き月収は取っ払い約二十二万円。国民年金と国民健康保険料、地方市県民税を払うと手取りは十六万円を切る。  不満をいいだしたらキリがない。  他人様を占って得れる収入なんてこんなもんだ。しかも御神託はほとんど俺の捏造だしな。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!