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「料理ってさ、一種の魔法じゃないかと思うんだよ」
「…………は?」
また素っ頓狂なこと言い出したなこのサボり魔が、と口をついてでそうになったのを何とか飲み込み、目の前でシェイカーを振るフォルテを引き攣った笑顔で見る。
色々と突っ込みたいことはあるが、一先ず後回しだ。
ニーアの疲労が、真冬に降り積もる雪の如く蓄積していく中、見回り作業も高等部に入っていた。ある意味創蘭学園において一番の難敵である。
「……まず言わせて下さい、今料理っていいましたよね?」
「ああ、言ったが?」
今ニーアがいるのは、高等部校舎の教室四つをぶち抜きで占領し行われている、男性陣による女装喫茶だ。
喫茶、というよりも、ほぼフードコート状態である。各々、思い思いの店を開き接客する、といった具合らしい。
「それがなんでシェイカー振ってるんですか!?それ料理っていいませんよね!?」
その一角。
此処はフォルテが自慢げにシェイカーを振る、所謂バーである。
御丁寧にもドレス着用だ。特に中性的な顔立ちというわけでもないので、若干無理がある。
「失敬な、カクテルかて立派な料理だ。料理ってのは食材を加工することだ。撹拌て加工作業を含むこれは……」
「屁理屈こねなくていいんです!!あぁもう頭痛い!!」
腰まである長い赤い髪を振り乱し、がしがしと掻き乱すニーア。普段からは予想もつかない乱れっぷりである。
中央棟のあの二件の後では自棄になりたくもなるだろうが。
そんなニーアを見て、表情だけは妖艶に(しかし仕草は完全に男である)フォルテが笑う。
「まぁ落ち着けよ、ニーア。一杯どうだ?」
「未成年です!!」
のっけからこの有様。
高等部男性陣という一番灰汁の強いキャラが運営するこのフードコートをこのまま放置しておくのは、些か以上に危険過ぎる。
「営業禁止です!!」
「マジでか。こうでもしなきゃ女装なんざやってられないんだがな……」
どうやら一件一件見回る他なさそうだ。
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