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六月、まだ雨は止まない。
梅雨時だ、当たり前といえば当たり前だろう。こう言うと餓鬼臭いだろうが、雨は外に出れなくなるのであまり好きではない。別段外に出たいというわけではない。というよりかは中でじっとしているのが億劫なのだ。
「……息苦しいったらよ、ありゃしないな」
窓に頬杖をつき、校庭に降りしきる雨を眺めるラインはなんとはなしにそう呟いた。今のところ小降りにはなっているものの、薄暗い空は憂鬱な気分を煽る。
「しょうがないよ、六月だもん。何か中で出来ること探したら?」
隣から聞こえる声は、普段は明るく快活なのだが今は長雨に打たれて萎れている。
「なら……なんかアイディアないのか、水晶?」
ラインに問われた水晶は、ラインの隣で顎を窓の淵に乗せたままむー……と唸る。
水晶が唸っている間、雨が落ちる音がやけに大きく響く。屋根に当たって流れ落ち、窓にぶつかって弾け、校庭へと染み込んでいく。
この雨の一生の音に耳を傾けるのもいいかも知れない。こんな普段なら考えもしないことが浮かぶのはアンニュイな気分のせいだろうか。
「……トランプでもする?」
「いいな、大富豪でもするか」
「え~、二人で?」
「面白そうだな、先生も混ぜてくれるか?」
突然頭上から降ってきた静かな、しかしこの寒気(カンキ)も尻尾をまいて逃げ出すような怒気を孕んだ声に、ラインと水晶は身の危険を感じて後ろを振り向く。
「あ……先生……」
「あ、これはですね、えーっと……」
そこにいたのは国語教師だった。
その顔はこの上なく笑顔だというのに、般若に睨まれているように感じるのは何故だろうか。
しどろもどろといった様子でラインと水晶は弁解しようとするが、教師は聞く耳を持つはずがなかった。
「俺の授業サボるとはいい度胸してるなテメェら…………歯ァ食いしばれェ!!」
創蘭学園・スピンオフ
~雨の晴れ間に~
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