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「あの場所に入った時言葉が出なかったの…悲しい気持ちと、切ない気持ちで胸がいっぱいだった。でも…なんで死ぬ前なのにあんなに素敵な笑顔になれるの?…あの笑顔,すごく心に響いた…」
瑠美の気持ちが悲しさに溢れだした。
「あの笑顔の裏には大変な苦労があったんだよ。あの笑顔は決意と覚悟、死への恐怖を乗り越えた証だね。でなきゃ、あんなにいい笑顔は出せないものだから。偽りではなく心の底から笑顔になれたんだと思うよ…。出撃前の特攻兵は涙を見せたり、弱音を吐いたりする人はいなくてね、立派な姿と優しさに満ち溢れてたからね」
「うん…その雰囲気はすごく伝わってくる。明日死が待っているというのに……どんなに辛かっただろ。出撃前なんてどんな心境だったのかな。体当たりする時は?
おばあちゃん……知りたい事いっぱいだよ!今さらだけどおばあちゃんが特攻兵のお世話していた事が何だかすごい事に感じる。きっとたくさんの出来事があったんだよね…」
「そうだねぇ。あの時代の中で何もない事はなかったものね。おばあちゃん達にしか知らない話しはたくさんあったね。
…この先ずっと胸の中に閉まっておこうと思っていたけど…瑠美ちゃんには話しておかないとダメな気がするね。瑠美ちゃん…良かったら聞いてくれるかい?」
「おばあちゃん!!
もちろんだよ!私こそ聞かせてほしいです!
の、前におばあちゃん。
私着替えてくるね!」
「まだ制服だったね。」
「うん!とりあえずゆっくり話し聞く為に今から着替えて準備してくるね。待ってて」
「わかったよ~。準備しておいで。待ってるからね。」
「は~い」
何だろうね。この気持ち。昔に戻っていくように、鮮明にあの頃の記憶が蘇ってくる。
……なんだかみんなが側にいるような気がするね。
暖かい空気になってる。
きっと戻ってきてくれたのかな…。この歴史を伝える為に。
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