魔術師としての日常

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「あれ……、聖女サンがいる。ああ、やっぱりこれは夢だ」  うんうん。 と自己完結して布団をかぶり直して寝に入ろうとした所で、ピタリと灰村の動きが止まる。 (あれー? 夢だよね、これドリームだよね? なんで布団や枕からいい匂いがするの? あれれー?)  あまりの非現実的な妄想(だと思い込もうと必死)に、ああこんなにも僕は重症だったんだ……、と現実逃避するしかない灰村。  だが、たったの一言。早乙女聖という聖女の「ちょっとアンタ」という一言で無情な現実へと強引に引き戻される。  ビクッ! と身体を震わせ、灰村はソーッと聖と目を合わせる。 (どーしよう。やっぱり現実みたいだ。出来るだけ他人とは関わり合いたくないのに……。いや、僕は誰かと関わり合っちゃダメなんだ。僕と関わった人は必ず不幸になる……) 「――ンタ! ちょっとアンタ! 聞きなさいよ!」 「えっ、ああ、ゴメン。何?」  ふう、と額を押さえてため息を吐く聖女様。  どこからどう見ても不機嫌そうにしか見えない聖に灰村は苦笑いを返す。
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