魔術師としての日常

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「まあ、いいわ」  その表情からは明らかに怒りしか感じられず、それは言葉にせずとも灰村にしっかりと伝わった。  しかし、殴られるかもしれないという危険を犯してまで「明らかに怒ってますよね?」と問う事は出来ない。というより、したくない。  それでも聖は引き攣った笑みを浮かべる灰村を気にも留めず質問を繰り出す。 「で、アンタは何であのバカどもにやられ放題だったわけ? アンタならアイツらくらい返り討ちに出来るでしょ」  その苛立ちを多分に含んだ聖の言葉に、ビクッとしてしまう。 「僕じゃ無理だよ」  灰村の答えが頭にきたのか、聖は親の仇でも見るような目で彼を捉える。 「ふざけてんの? アンタがあそこで『魔術を使おうともしてなかった』事くらい分かるわよ」 「………………」  聖の言葉に灰村は無言で返すしかなかった。  魔術を行使する場合、余程の技術がない限り、その痕跡は確実に残る。しかし、聖が辿り着いた時、あの場に残されていた魔力の残滓は六つ。  これだけでも普通なら有り得ない事だった為に、よく覚えていたのだ。
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