魔術師としての日常

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 魔力というのは、体内に取り込んだ酸素を分解、再構築し創り出されるもので、個々により違う匂いがする。  ただ、誰にでも酸素を魔力へと再構築できるワケではなく、それは産まれもった資質によって一〇歳から一八歳の間で体内に器官が造られるかどうかで決まる。  よって、どれだけ魔力の痕跡を消そうとも、どれだけ体内で再構築した魔力の匂いを消そうとも、全てを消す事は出来ない。  魔力の匂いを消すというのは、空気の匂いを消すという事と同意であり、消したいならより強い魔力の匂いで上書きするしかないのである。  そして、早乙女聖が有り得ないと思ったのは、呼吸をするだけで体内に魔力が創られるにも拘わらず、灰村からは眠っている時も魔力の匂いを感じられなかった事だ。 「アンタもこの町にいるからには魔力を創り出す器官があるんでしょ? なのにアンタから魔力の匂いを感じられないのは何でかしらね」 「それは…………、言いたくない」  一瞬、聖はムッとした表情を見せるも、無理矢理聞き出すつもりはないのか、すぐに諦めてため息を吐く。
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