魔術師としての日常

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「じゃあ何でアンタはイジメられてたの? それくらいなら教えてくれてもいいんじゃない?」  灰村は唸った。確かに、聖にも理由を聞く権利があると考えたからだ。  それでも、灰村は悩んでしまう。  巻き込みたくない、という理由からではなく、灰村本人が他人と関わりたくないからである。  チラッと灰村が聖に目を向けると、そこには仁王立ちして上から見下ろしている顔が視界に映った。  確実に自分が納得する答えなり、説明を聞かない限り帰らせてくれない人種の顔をしている。 「はあ、分かったよ。僕がイジメられてるのは、魔術を使わないからだよ」 「はあ? 魔術を使わない? 使えないじゃなくて?」 「使えなかったら町にも入れてもらえないでしょ?」  困ったような表情で言われた聖は「あ、そうよね」と取り敢えずの納得を示す。 「じゃあ使えばいいじゃない」 「嫌だ。僕は使いたくないから使わない。その代償がくだらないイジメで済むなら僕はそれでいい」 「理解できないわね。アンタのソレは自分の首を絞めてるだけよ? この町は魔術師としての力量がモノを言う町なんだから」  それは承知の上だよ、と言うように灰村は初めて作りものでない笑顔を聖に向けた。
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