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風が強い。
夕闇に染まる世界で、ここだけが切り離されたように暗い校舎裏に、その少年はいた。
「よお、なーんでまだ生きてんでーすかー?」
無遠慮な六人の少年たちは一人の同年代の少年を囲み、嘲るような嘲笑の声を上げている。
だが、少年は何の反応を示そうとしない。
度胸が据わっていると言えば聞こえはいいが、その目を見れば解る。
少年は既に諦め、成り行きに身を任せているだけなのだ。
ふう、と少年がため息を零した次の瞬間、少年の身体は宙に浮いており、俯(うつぶ)せになるようにして地面に叩きつけられた。
取り囲んでいる少年たちのリーダーと思しき筋肉質な肉体の少年に、頬を思いきり殴られたからだ。
「…………ッ!」
殴られた少年の唇から顎に一筋の赤い線が描かれる。
「言ったよな? テメェみたいなヤローが俺たちと同じ学校にいんのは目障りだってよ。だからよ――、」
早く転校しろよ。 と殴った少年は言葉を続けたいのではない。
理不尽な暴力を振るう少年は、
「――テメェは自殺でも何でもして早く死ねよ」
この世から消えろ。 と少年に言っているのだ。
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