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「今から外を歩けば《ジャスティス》に捕まるわよ」
じゃあどうしよう、と考えるも、やはり『帰る』という選択肢以外にない気がする。
「それでも帰らないワケにはいかないよ。いくらなんでも年頃の男女が一つ屋根の下で眠るワケにはいかないでしょ?」
それはそうだ、と聖が納得しかけた時、更に余計な灰村の追撃が飛ぶ。
「それとも、僕なんかと一緒がいいの?」
イタズラ心が刺激されたのか、めったに見せる事のない、わざとらしい流し目で聖の方を見る。
「な……ッ!? い、いいいいワケないじゃない!!」
憤然と完全否定する早乙女聖だが、その顔は茹で蛸を思い起こさせるほど真っ赤だった。
「でしょ? だから僕は帰るよ」
彼の本心を暴露してしまえば「聖女サンと一夜を共にしたと誰かにバレたら、灰村サンは殺されちゃいますよ?」という保身が大きかった事は秘密だ。
「なんか……、ムカつくわね」
そんな言葉を背中で受け止めながら、灰村諷音は早乙女聖の部屋から退出した。
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