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「あの流れのままだと泊まらせられかねなかった気がする。一つ屋根の下に聖女サンがいたら寝れないもんね」
三〇万もの見習い魔術師を抱える魔術師育成都市にありながら、二二時を過ぎた町は寂しいものだった。
魔術師育成都市には一軒家という家屋はなく、町に並ぶ家は全てアパートやマンションであり、その全てが町に集められた少年少女たちの寮として使われている。
ただ、そのアパートやマンションにも格付けがされており、成績次第で寮の立派さが変わる。
つまりは、成績がよければ整った環境の寮を選ぶ権利が与えられ、成績が悪ければ余り物件の寮にしか住めないのである。
そして、魔術師育成都市で最高位の五人に選ばれている早乙女聖の住む寮は、当然のように豪奢なもの。
そういう理由もあり、聖の住む寮を出た灰村は両脇に建ち並ぶ一室ウン億円としそうな億ションを流し見ながら街灯に照らされた道を一人でトボトボと自分の寮に向かって歩いていた。
そして今、とても大きな問題に直面していたりする。
「僕の家……、どっち?」
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